塩害によって屋根が受ける影響について

2022/10/30

建物への塩害をご存じでしょうか。主に海の近くで発生する建物への影響で、特に金属系の屋根には深刻な被害があります。

新築であっても、数年で屋根材に被害が出て雨漏りするといった事例はたくさんあります。

なぜ海の近くで塩害が発生するのか、塩害によって屋根が受ける影響とは、さらに塩害から屋根を守る対策について解説していきます。

塩害とは

主に沿岸部で見られる、塩分による被害をいいます。海中の塩分が海風や潮風に乗って陸地へ運ばれます。塩分は金属の酸化を促進させますから、付着すると錆びを発生させます。流れ落ちるなどして離れてしまえば比較的少ない被害で済みますが、付着したまま放置すると被害が大きくなります。

錆が発生すれば脆くなり穴が開くなどの被害が短期間で起こります。

塩害の範囲

塩害を受ける範囲は、海風に乗って塩分が運ばれる範囲のすべてということになります。当然その塩分が強いほど影響を受けやすいと言えます。もっとも被害を受けやすいのは海岸線に沿って建っている沿岸部です。しかし海岸線から多少内陸に入っていても被害を受ける可能性は充分あります。海岸からの目安の距離としては2キロ程度といわれています。ただ海風の強さには海岸によって差が大きく、地形なども影響します。2キロ以上離れていても被害を受けることはありますし、2キロ以下でも被害を受けないこともあります。たとえば海岸までの間に山があり、その山のふもとあたりに建っている建物ではまったく影響がないという例もあります。

塩害の対象

塩分は金属を錆びさせるため外部の金属全般に影響する可能性があります。住宅でいえば外部の外壁やベランダなどに金属が使用されていれば対象になります。たとえコンクリートであっても、内部の鉄筋まで塩分が侵入し錆びさせるという被害がありえます。数年前にアメリカのフロリダでマンションが突然倒壊するという事故がありました。原因は未だに不明のようですが、40年くらい経っているので構造や設計など当初のミスの可能性は薄いため、やはり塩害の可能性は否定できないようです。このように潮風などによる塩害は思った以上に深刻な影響を与えます。

屋根に関する塩害の対象になるのは、主に金属系の屋根です。金属系の屋根ではガルバリウム鋼板も銅板もトタンもすべて対象になります。

塩害によって屋根が受ける影響は

海からの潮風によって塩害を受ける屋根の多くはガルバリウム鋼板や銅板やトタンなどの金属系の屋根です。

屋根面や軒先などに付着した塩分によって錆が発生し、穴が開くなどの腐食が進行します。ビスなどの金具も錆によってダメージを受けます。

そうなると、当然雨漏りの原因になります。

特に多いケースは、軒先の被害です。軒先の水切り部分、軒付けの部分に激しく錆が発生し、変色して穴が開き、雨水が浸入しやすくなります。これは、屋根面に付着した塩分が雨などによって軒先へ流されてくるため起こりやすい現象です。

屋根の勾配が強いほど屋根面の被害は減る傾向があります。ただ、縦葺きよりは横葺きのほうが屋根面の被害は大きくなる傾向があります。横葺きのケースでは一般的に5寸から8寸の葺き足で横ハゼがあります。この横ハゼに塩分やホコリが溜まりやすくなっているため、錆も発生しやすくなります。

同様に、屋根に降った雨水が集まってくる谷部がある屋根形状の場合も注意が必要です。谷部の溝に塩分が溜まりやすくなり、さらにその先の排水部分はもっとも錆びやすいということになります。

塩害から屋根を守る対策は

既に金属系の屋根の場合には完璧な対策は難しいのですが、マメに屋根へ散水して塩分を洗い流すことで被害を抑えることは可能です。葺き替える場合や塗り替える場合には錆びにくい塗料にするなどできることはあります。瓦などの自然素材であれば一部の金具を除けば影響を受けることはありません。

また、金属系の屋根の場合、マメに屋根へ散水して塩分を洗い流す以外でできることがあるとすれば、軒先だけをチタンにするという裏ワザがあります。チタンは塩害を受けないため、全面的にチタンにすれば一番いいのですが、材料費が非常に高価なため、軒先だけに限って使用することで費用を抑え、被害が大きい軒先部分を守ることができます。

まとめ

塩害による被害は思いのほか甚大です。海が目の前というロケーションはもちろん、離れていても意外なほど影響を受けることがあります。もし沿岸部で家を建てる、または買う、あるいは屋根を葺き替える場合は、くれぐれも注意が必要です。海が見えるという景色に気を取られがちで現実的な問題点をスルーしてしまわないようにしましょう。使用する屋根材に注意する、既存の屋根の状態をよく確認する、まわりの建物の被害状況を確認するなど、よく検討することが大切です。